一番問題だったのは、私はキャラヴァンを抜ける時に、自分の楽器の殆ど全部(たったひとつハモンドのA-100だけは持って出たが)を置いてきてしまったということだった。結局私は中古でドラム式を買い、何回か練習をした後、ピアノとベースとドラムを録音し始めたが、ジェレミーの専門的知識がなければ とてもやりとおせなかっただろう。そして1976年の夏に、ある大学のホールを借りて数日間、夜中じゅうぶっ通しでやって、録音を完成させた。

　その後まもなく私は音楽友達のジョー・グーベイの家に寄宿することになった。その家は田舎にあり、ここで私は「アーリー・モーニング・バード・ソングス』などの残りの曲の録音を完成させた。そしてゲイ・ペレズというメキシコ・シティ出身の若い女性が幾つかの曲で歌詞を書き歌も歌ってくれたのであった。

　そんなわけで殆ど1年近くかかった後、私はようやく自分の曲のカセットを持ってロンドンに着いた。バック・アップしてくれるレコード会社を探そうと思ったのである。ところが、運命とはたいていそんなものだが、このタイミングが非常に悪かった。時代はまさにパンクの全盛期で、レコード会社はどこも、一番やかましく一番ショッキングな音楽にしか興味を持っていなかったのである。

　私はがっかりしてロンドンを離れたが、もう少し努力してみようと思った。そこで私達はそのうち3曲をライヴ・バンドで録音しなおした。すなわちベースにグラハム・フライト、ドラムにピート・ピプキン、ギターにマーク・ホーキンス、私がキーボードというメンバー構成だった。そうしてロンドンに再び戻ったがやはり幸運には恵まれなかった。結局私はそのテープを屋根裏にしまい込んだまま忘れてしまった。